山下佳恵詩集『あなたへ』


とり


隹は小柄な体に短い尾
長い尾のとりは 鳥の字が

小さな小鳥 身近な小鳥
昔話にも出てきます
よくばりばあさん
自分で舌を切ったのに
土産をもらいにたずねたお宿
もらった土産からでてきたものは
宝物とはほど遠い
恐ろしい妖怪や虫ばかり

木の上にたくさんのとり むらがりできた字や
翼の広い鳥から雄の字が生まれ
わずかにひらく此から雌となりました

クククと鳴くからつけられた
平和の象徴とされる鳥
餌をあげるのを禁止されたりしています
世の中変われば変わります

体全体真っ黒で
目がどこにあるかわかりにくいこの鳥は
鳥に一本足りません

七夕の夜の天の川
織姫と彦星のためにかけられる
年に一度の恋の橋
昔の鳥の翼でかかる夢の橋

学ぶ鳥
災い転じて福となす
ウソという鳥 伝説が
本当ならば叶えてほしいこの惨状
小枝を一枝くわえてきて
辛いから幸に変えてほしい
幸のあふれる世界となれ

とり 隹 鳥よ
空高く
舞って見てきて教えてよ
空からこの見えるこの地上
どうなっているのかを
どうなっていくのかを


※ 隹(ふるとり・とり)、鳥(とり)、雀(すずめ)、集(あつ・まる)、雄(おす)、雌(めす)、鳩(はと)、烏(からす)、鵲(かささぎ)、鷽(うそ)


「 とり 」( 了 )

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