山下佳恵詩集『あなたへ』


高架下の鳩


環状七号線高円寺と中野のJRの高架下には
何羽かの鳩が巣を作っていた
上に電車が下に車や人が
ひっきりなしに行き来する
その高架下を
鳩は出たり入ったり
飛び回っていた

頭の上に直撃することもあった
時折落ちてくる鳩の 糞

この巣から何羽の雛が育ち飛びさったのだろう
初めて巣から飛びたつときに怖くはなかったのだろうか

夏の暑い日差しの中も冬の寒い凍える日にも
朝早くても夜遅くても
電車は通り車や人も変わらないように行き来する

ある日
一羽の鳩が仰向けになって道路に落ちて死んでいた
何かをつかむかのように空にむかって伸びていた 足
何をつかもうとしていたのだろうか その足は
何かをつかめたのだろうか その足で

2012年の夏は
また復活したゲリラ豪雨が
辺りを暗くしたかと思ったら
突然大粒の雨が降りだし
その鳩は
雨に打たれているだけだった 



「 高架下の鳩 」( 了 )

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