山下佳恵詩集『あなたへ』


禁断の箱


決して開けてはいけません

竜宮城から帰るとき
乙姫様から手渡された玉手箱
決して開けてはいけない と
言われた約束やぶってしまい
玉手箱から白い煙
おじいさんになった太郎さん
何も残されていなかった 玉手箱の 底

決して開けてはいけません

プロメテウスが残していった黄金の箱
美しい箱に魅せられたパンドラ
決して開けてはいけない と
言われた約束やぶってしまい
黄金の箱から飛び出していった疫病、犯罪、悲嘆
災いの数々・・・
でも
希望というものだけが残された 黄金の箱の 底

決して開けてはいけません

膨らみすぎた数々の問題
積み重なっていく数々の難題
解決されない苛立ちが
膨らんで膨らんで
開けられてしまった禁断の箱
この箱から飛び出したのは何だろう

箱の底には
玉手箱のようになにも残されていないのか
パンドラの箱のように希望だけは残されているのか
それともなにか別のものがあるのか

決して開けてはいけません
開けてはいけなかった 禁断の箱



「 禁断の箱 」( 了 )

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