山下佳恵詩集『あなたへ』


絞め殺しのイチジク


木の枝に止まった鳥
鳥の糞の中に包まれていた種
お日様の光に目を覚まし細い根を地面に向けて伸ばしていく
根が地面についたなら
安心して枝を広げてまた根をたらしていく
細くしがみついているような根は
地面から吸い上げた栄養で
どんどん太くたくましくなっていく

長い年月をかけて
元の木を完全に覆いつくしてしまい枯れさせてしまう
元の木が倒れても
絞め殺しのイチジクは倒れない
太くなった根がしっかりと大地から何本も何本も支え
しっかりと自分の力で立っている

元の木も少しでも多くお日様の光を浴びたい
高く 高く育ちたい と
他の木に負けずに頑張ってきたのだろう

そんな木を狙って落とされた
小さな種が育っていく
熱帯雨林で生き延びるために
お日様の光を求めて
したたかに託された願いの種

絞め殺しのイチジク
長い年月をかけて果たした野望
大きく育った木は
夜の観光スポットとして紹介され
地面から
人工の光が照らされていた



「 絞め殺しのイチジク 」( 了 )

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